「専門医がお答え、リウマチがなかなか良くならない!?」
すでにリウマチと診断をされ治療をされている方から良く頂く質問、それが「治療をしているのになかなかリウマチが良くならない!?」といった内容になります。
リウマチを治療されている方から良くいただくご相談をいくつかまとめてみました。
もちろんお1人お1人でリウマチの程度や治療状況も異なるとは思いますが、あなたの気になっている内容に近いご相談がありましたら、参考にしていただけると嬉しいです。
- 先月からリウマチの治療を始めたのに、痛みや腫れがなかなか良くならないんです
- 血液検査では炎症が無くなったのですが、まだ痛みがあります。これはリウマチでしょうか?
- レントゲンで骨は問題なく、血液検査で炎症もないので、まだ治療するほどのリウマチではないと言われています。でも、だんだん痛みが強くなってきて、このままで良いのか心配です
- 長年リウマチを治療しているのですが、最近手首や足が腫れて痛くなるようになりました。手指や足指も徐々に変形してしまいました
- 生物学的製剤で治療をしているのですが、最近痛みや腫れが出るようになってきました。効き目がわるくなった感じがします
- メトレートが吐き気や口内炎があってなかなか増やせません、リウマチの痛みも残っています
- 来年には結婚予定なのですが、最近リウマチと診断されました。手指もまだ腫れていてリウマチも良くなっていないですし、将来妊娠や出産が問題ないのかなど心配です。
Question No.1
「先月からリウマチの治療を始めたのに、痛みや腫れがなかなか良くならないんです」
- 現在の治療状況
- メトトレキサート 週3錠
Answer No.1
「メトトレキサートの効果がでるのはゆっくりになります。また徐々に量を増やしていくお薬になりますので効果を十分発揮するのに数か月お時間がかかるお薬になります。症状が強く早く良くしたい場合には、早期に生物学的製剤の治療を始めたり、短期的にステロイドを使うなど、即効性のある治療を一緒に行う方法があります。」
- 治療例
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- メトトレキサート 週3錠→週4錠に増量
- エタネルセプト(生物学的製剤)50㎎を2週に1回開始
- プレドニン5㎎ 1錠を開始
- 解説
- リウマチの飲み薬はどれもゆっくり効果が出てきます。また最初は少ない量から始めて、飲み合わせなどを見ながら徐々に増やしていきますので、充分な量で効果を発揮するには数か月がかかります。
リウマチ治療の中心になるメトトレキサートに関しても、まずは週3錠で開始し、翌月は週4錠、翌々月が週5錠といった感じで、月ごとに飲み合わせを確認しながら1錠ずつ増やしていき、最大の効果がでる週6錠前後を目指します。そうすると、どうしても3-4カ月の時間を要します。
そこで、痛みや腫れの強い方には即効性のある生物学的製剤の治療や、短期的なステロイドを併用することで、リウマチを早く良くすることが期待できます。もちろんステロイドの長期の投与は骨粗鬆症などの影響がありますので、メトトレキサートがしっかり量が増えて効いてくる数か月後には減らして中止を目指します。即効性のあるお薬と、ゆっくり効くお薬を一緒に使い早くリウマチを良くして、徐々に即効性のあるお薬を減らしゆっくり効くお薬にバトンタッチをしていくイメージですね。
Question No.2
「血液検査では炎症が無くなったのですが、まだ痛みがあります。これはリウマチでしょうか?」
- 現在の治療状況
- 治療前CRP2.7 → 現在CRP0.3、足指と踵が痛い
Answer No.2
「炎症の数値が正常になっても、手指や足指などの小さな関節にリウマチが残っていることが良くあります。実際に痛みのある関節にリウマチが残っているかを診察や関節エコー検査などでしっかり調べることが大切です。」
- 解説
- 膝や肩など大きな関節が腫れたり、あちこち多くの関節にリウマチが出てしまうと、血液検査の炎症反応(CRP、血沈、MMP3)などが高くなります。もちろん、これらが高く関節が痛い場合にはリウマチが残っていることを教えてくれているので、関節の症状があれば治療を強化することが大切です。ただ、注意するのはリウマチが残っていてもCRPなどの血液検査の炎症反応は正常になってしまうという事です。とくに、手指や足指など小さな関節が腫れリウマチが残っている場合には、CRPなどは正常のことが多いです。
「CRPが正常になったんだかから、その痛みはリウマチでは無いよ」とほおっておくと、手指・足指など小さな関節に残っているリウマチが進行し手指・足指の変形につながってしまいます。
そこで、血液検査で炎症反応がなくなることはもちろん良い事ですが、それでも痛みや腫れがある場合にはリウマチが残っていることを考えてしっかり診察で腫れが無いか確認し、関節エコー検査で気になる関節の中にリウマチが残っていないか調べることが大切になります。
Question No.3
「レントゲンで骨は問題なく、血液検査で炎症もないので、まだ治療するほどのリウマチではないと言われています。でも、だんだん痛みが強くなってきて、このままで良いのか心配です」
- 現在の治療状況
- CCP抗体陽性 リウマチ因子陽性 CRP0.2正常 鎮痛剤内服
Answer No.3
「確かに炎症反応CRPが正常ではありますが、CCP抗体というリウマチの体質を見る検査が陽性で、関節に痛みのある場合にはリウマチを発症している可能性があります。専門医を受診し、関節に腫れが無いかの診察、関節エコー検査でリウマチを発症しているのかを調べましょう。」
- 解説
- 昔はレントゲンでリウマチを診断しておりましたが、それはリウマチが進行し骨が壊れ変形が起きて初めて診断ができるというものでした。レントゲンは骨しか写らず、リウマチが起きる関節は写らないので、骨にダメージがでてからではないとリウマチが分からなかったからです。また血液検査の炎症の数値も、手指・足指など小さな関節の腫れでは正常のままのことは良くあります。
大切なのは、骨が壊れる前のレントゲンでリウマチと分からない早期に治療を始めて、骨にダメージを与えないことになります。ただ痛い関節にリウマチが起きているかを早期に診断するのは非常に難しく、リウマチ専門医を受診し関節に腫れが起きてるかを診察すること、また関節エコー検査ができる医療機関があればそこで関節の中にリウマチの炎症が起きているかを確認することが重要です。
Question No.4
「長年リウマチを治療しているのですが、最近手首や足が腫れて痛くなるようになりました。手指や足指も徐々に変形してしまいました」
- 治療内容
- 80才女性 リマチル3錠
Answer No.4
「リマチルなど、昔のリウマチ薬ではリウマチを抑えきることができず関節の変形が出てきてしまう方が多くいらっしゃいます。近年登場した、リウマチの進行をしっかり抑えられるお薬に変更をしていきましょう。またリマチルは1日3錠も2錠も効果は同じで、3錠のほうが副作用が出やすいので2錠に減らしましょう。」
- 相談後
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- リマチル3錠→2錠に減量
- オレンシア皮下注射 開始
- プレドニン2.5㎎追加 (リウマチが良くなったら減量・中止予定)
- 解説
- リマチルは、昔よく使われているお薬でした。痛み止めや金製剤しかなかった数十年前に登場し、当時のお薬に比べると効果に優れていました。しかし、それでもリウマチを完全に抑えることは難しく、痛みが持続したり、徐々に骨の破壊がすすみ手指の変形が出てきてしまう方が多くいらっしゃいました。
しかし、現在ではメトトレキサートや生物学的製剤といったリマチルよりも治療効果の高く、リウマチの進行をしっかりと止められるお薬が登場しております。もちろんリマチルで症状が安定している方は無理にお薬を変更する必要はありません。ただ、長年リマチルで治療しているのに痛みや腫れが残っていたり、関節の変形が進行してきている方は、ぜひリマチルだけでリウマチがしっかり抑えられているのかを関節エコーなどで調べ、お薬を見直す事が大切です。
Question No.5
「生物学的製剤で治療をしているのですが、最近痛みや腫れが出るようになってきました。効き目がわるくなった感じがします」
- 現在の治療状況
- レミケード点滴 メトトレキサート週3錠 プレドニン7.5㎎
Answer No.5
「レミケード(生物学的製剤)に対する抗体ができてしまい、点滴をしてもすぐにレミケードが体から無くなってしまう2次無効という状況です。他の生物学的製剤への変更を検討されるのが良いかと思われます。」
- 相談後
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- レミケード→エタネルセプトBS 変更
- メトトレキサート週3錠→4錠 増量 (週6錠目指しゆっくり増量)
- プレドニン7.5㎎継続 (リウマチが良くなったら減量・中止予定)
- 解説
- 現在数種類の生物学的製剤が登場しています。良く聞かれるのが、「どの生物学的製剤が一番よく効くのか」という点ですが、一言でいうとどの生物学的製剤も効果の面でははっきりした差はありません。どの生物学的製剤を選んでも2-3か月後に8~9割の方が良くなります。
はっきりとした違いがあるのは、「使っているうちに効き目が無くなりやすい生物学的製剤なのか、いつまでも効き目が長持ちする生物学的製剤なのか」という点です。
生物学的製剤は飲み薬とちがって大きなたんぱく質なので、使っているうちに体が異物と勘違いして生物学的製剤を吸着してしまう抗体を作るようになることがあります。これを中和抗体といいます。いったんこの中和抗体ができると、そのあとはいくら同じ生物学的製剤を使っても、体に入った瞬間に中和抗体にお薬が吸着されて無くなってしまい効果を発揮できません。こうなってしまうと、他の生物学的製剤に変更せざるえなくなってしまいます。
この体に異物と思われて中和抗体を作られてしまいやすい生物学的製剤には、レミケードやヒュミラがあります。逆に中和抗体ができにくい生物学的製剤にはエタネルセプト、オレンシアなどがあります。また中和抗体はメトトレキサートを十分な量使うことで予防できるので、十分量のメトトレキサートを使うことが生物学的製剤の効き目を長持ちさせるコツになります。
Question No.6
「メトレートが吐き気や口内炎があってなかなか増やせません、リウマチの痛みも残っています」
- 現在の治療状況
- メトレート週4錠 ロキソニン
Answer No.6
「メトレートの口内炎や吐き気は、フォリアミンという葉酸のビタミン剤や胃薬を使うことで良くなることが多いです。まずは、葉酸や胃薬を試してみましょう。また、メトレートの量が増やせずリウマチが良くならない時は、生物学的製剤やプレドニンも一緒に使っていくのも良いですね。」
- 相談後
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- メトレート週4錠、フォリアミン、胃薬 (吐き気・口内炎改善)
- プレドニン5㎎(リウマチが良くなったら減量・中止予定)
- エタネルセプトBS50㎎ 2週に1回
- 解説
- メトレートはリウマチの飲み薬の中で一番効果があり、生物学的製剤との相性も良いので、リウマチ治療の中心になるお薬です。ただ、頻度は低いながら吐き気や口内炎などの症状が出てしまう方がいらっしゃいます。リウマチの痛みが良くなっても、吐き気や口内炎が出てしまっては良くないので、これらの症状がでないように上手くメトレートを使っていくのが大切です。
ポイントは、「メトレートを週3錠など少ない量で開始し、飲み合わせをみながら1錠ずつゆっくり増やしていき週5-6錠を目指す」「最初からフォリアミン(葉酸のビタミン剤)を使う」「吐き気が出るようなら、メトレートを飲むときに胃薬を一緒に使う」になります。
またメトレートだけでリウマチを良くしようとするとどうしてもメトレートの量が多くなってしまうので、生物学的製剤やプレドニンなど他のお薬の力も併せてメトレートの量を抑えつつリウマチを良くしていく方法もあります。
Question No.7
「来年には結婚予定なのですが、最近リウマチと診断されました。手指もまだ腫れていてリウマチも良くなっていないですし、将来妊娠や出産が問題ないのかなど心配です。」
- 現在の治療状況
- メトレート週3錠 プレドニン5㎎ ロキソニン
Answer No.7
「妊娠・授乳中にも使用できるリウマチのお薬がありますので、安心してください。ただ、リウマチがまだ抑えられていないので、妊娠・授乳中も使える生物学的製剤エタネルセプトを始めるのがおすすめです。またすぐには妊娠を考えられていないとの事で、妊娠計画の出る3か月前まではメトレートも使っていきましょう。」
- 相談後
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- エタネルセプトBS50㎎ 2週に1回
- メトレート週3錠→週4錠(週5-6錠目指して増量,妊娠希望3か月前から中止)
- プレドニン5㎎
- 解説
- リウマチのお薬には妊娠・授乳中も使えるものと使えないものがあります。リウマチ治療の中止になるメトレートは残念ながら妊娠・授乳中は使えません。妊娠を希望される3か月前から中止する必要があります。
その一方で、お若い方の場合には少しでもリウマチが残っていると、それが長い年月でつもり重なって手指の変形につながってしまう可能性があるので、しっかりリウマチを治療することが大切になります。
そこで活躍するのが、妊娠・授乳中も使用できる生物学的製剤(エタネルセプト、シムジア)になります。また昔からあるプレドニンも20㎎以下の通常のリウマチで使われる量は問題なく使用できます。
また、リウマチが良くなると妊娠しやすくなったり、妊娠するとリウマチの症状が良くなり、逆に授乳が始まるとリウマチが悪くなったりと、妊娠や授乳などのホルモン変化に伴ってリウマチの症状も変化することがあります。そんなリウマチの症状の変化に合わせて、お薬を調整していくことが大切です。